第32回|一人っ子の愛娘がド派手なバンド少女から清楚なお嬢様風に大変身!?
渡辺 美紀子(仮名)さん【47歳・パート勤務・大阪府】
新生児の娘に振り回されてはしゃいでいた新米パパとママ

大阪に住んでもう数十年の浪速のオバチャンです。
元他県出身とは思えないほどに大阪弁も板についていて、パート先では「生粋?」なんて聞かれるほどなんですよ。
夫と共に、もともと子どもがいっぱい欲しかったんですね。しかし初めての出産は大量に出血しただけでなく難産で、主治医の先生に「もう絶対子供は作らないようにね」と言われてしまいました。
この主治医の先生のセリフで私達の夢はこっぱみじんに砕かれてしまいました。
そんな私たちのことをなぐさめてくれたのは、他でもない、生まれたての新生児の娘でした。娘はほかの赤ちゃんと同じように、様々な不満を訴えて大泣きしました。
もちろん不満の種は、おなかがすいた! おむつ変えて! 眠れない! ゲップさせて!おならが出そう! などなど、どの赤ちゃんも訴えては泣く、むしろ模範的な内容ばかりです。
でも私たち新米の親にはその見極めが出来ず、おむつを替えてみようとしたら特に何も出てなくまっさらだったり、母乳を与えようとしたら逆に吐かれてしまったり、と、まさに大の大人が二人して赤ん坊に振り回され、毎日寝不足で目の下にクマを作ってる始末だったんです。
でも私たちは、娘に振り回されて、毎日眠たい目をこすりながらも、はしゃいでいました。それは、親になったんだ!という証拠のようなものでした。
そんなこんなで新米の親とはいえ、振り回されているうちに、泣き方で、
「アッ、これはオムツが汚れてしまっているんだな」「ゲップがたまってて苦しいんだな」などと、分かるようになってきたんです。
この頃には私たちはすでにお互いを、「ママ」、「パパ」と呼び合うようになっていました。親としての貫録がついてきたんだと思います。
娘が巻き起こした「大事件」
愛娘はすくすくと育ち、幼稚園、小学校、中学校、高校、と無事に進学していきました。この頃には、もう私たちは立派な親として毎日を過ごしていました。それは主人も同じ気持ちだったと思います。
そんな中、事件は突然起こりました。ある朝起きたら洗面所に金髪の人間が不法侵入していたのです。もう、びっくりして、あわてて主人を呼びました。
「誰だ、お前は!」
主人がその首根っこをつかんで顔をのぞきこんだところ・・・それは娘だったのです。
「何でこんなことしたの、ゆみちゃん!」
洗面所の床に転がっている使い終わったヘアブリーチ剤のボトルを拾いながら、私は、優しい顔に似合わず不釣り合いな金髪に染めた娘に尋ねました。なんでも、雑誌に載っているカリスマバンド少女に憧れてのことだったのだそうです。
それからはいくつもピアスの穴を開けたり、とてもここだけでは話しきれないくらい色々なことがありました。ピアスって、耳に開けるものだと思っていたんです、私。
でも、娘はおへそやまゆ毛、さらに舌にまで開けるほどエスカレートしていきました。夫婦会議をした結論は、
「やがて飽きるからほっとこう」
というもの。投げやりに聞こえますが、実は朝までかかって2人で真剣に考えた結論だったのです。
またまた!? 娘の華麗なる転身!
ある朝起きてダイニングテーブルを見たら、娘が付けていたピアスが全部、小皿においてありました。
一瞬卒業したのかと思いました。というのも昨夜、主人と
「うちは孫はあきらめなアカンな」
と話し合ったばかりです。
ところが、起きてきた娘はツヤツヤの黒髪に戻っていました。しばらく見ていたところ、ピアスをつける様子もないどころか、
「結婚したいねん」と一言。そして、今晩その相手を我が家に連れてくるのだというのです。
そこからは結婚式まであっという間でした。娘はどこで知ったのか、
「留袖、カビ生えてたんやろ、『和匠』の留袖レンタルでお父さんのモーニングと一緒に借りて結婚式に出たらいいで」
と博識ぶりまで見せてくれました。
旦那さんになる青年が、
「ぼくたちも結婚式は貸衣装で、『和匠』でお世話になる予定なんです。」
と言ったことが、さらに彼の好感度をアップさせてくれました。
そうして結婚式に臨んだのです。
今はコウノトリさんを待っているところです。幸せです。
ゆみちゃん、ありがとう!!