第39回|縁は異なもの味なもの
手島 和子(仮名)さん【57歳 奈良】
バツイチ同士の4人家族

このたび、娘が結婚いたしました。私たち夫婦はお互いバツイチ同士の再婚で、今回結婚した娘は前の夫との子供です。さらに今の主人との間に男の子ができたため、娘と息子と夫と私の4人暮らしでした。…ややこしいですね(笑)。
私と前の主人は、お互いに仕事が忙しくすれ違いがたびたび発生し、私が産後ウツのような状態になってしまい、別の道を歩むことにしました。
今の主人のその当時の事情は、あまり深く聞いていません。「俺の方が、愛想をつかされたんだよ」と言っていました。少なくとも私や娘には、いい夫であり父でしたので、話してくれたこと以上は訊かないようにしてきました。
結婚について私がいうと説得力がないかもしれませんが、基本的にはひとりの人と添い遂げるのが一番いいと思います。やはり縁があって一緒になったのですから、苦しいことも楽しいことも二人で力を合わせて乗り切っていってほしいと思います。ただ……生活を続けていく中で、お互いの価値観が大きく変わってしまうこともあります。お互いに「何か違う」と感じ始め、次第にその違和感が大きくなり、生活を続けることが難しくなったときは、思い切って状況を変えてみるのも手かもしれないと思います。縁は異なもの味なものというではありませんか。その時は、距離を置くしかないと思っていても、将来、ふたたび縁がつながることもあるのです。
生まれて初めてレンタル衣装を借りて
そういえば、私は今回、大きく価値観が変わりました。生まれて初めてレンタル衣装をお借りしたのです。
友人などは、御呼ばれで出席する結婚式に行く服もレンタルしていると聞いたこともあったのですが、私の中ではなぜか「借りるのも返すのも面倒」という思いがあり、今まで利用したことはありませんでした。
ただ、留袖は持っていなかったので、何かしらの方法で準備をしなければと思っていました。娘から聞いてインターネットで探し、「和匠」さんに出会いました。借りてからお返しするまでの手順もシンプルでわかりやすく、宅配なのでわざわざ貸し借りに出かけていく手間もなく、思っていた以上に簡単に借りられました。
それに店舗ですと、留袖1着とモーニング2着を借りるのはなんだか気が引けたと思います。ネットは、その面で非常に気楽でした。見栄えに関しては、申し分ありませんでしたし。
「お父さんがふたりいて幸せでした」
モーニング2着――そうです。娘は、前の夫も結婚式に呼ぶと言いました。今だから話すけどね……と娘が言うには、実は、思春期の頃から、私には反抗していて相談できなかったことを、前の夫にこっそり連絡を取って相談していたのだそうです。一緒に住んでいない分、気軽に相談ができたと言っていました。また、「お母さん口うるさいだろー」「そうそう!」など、共感することも多かったそうです。人生、何が幸いするかわかりませんね(笑)。
式に前の夫を呼ぶといいだしたとき、晴れの席でわが家の複雑な家庭環境をお話するのは気が引ける……と、正直なところ私は複雑な心境でした。娘はその家庭環境が影響してか、早くから自立心旺盛でサバサバした性格に育っており、あっさりと「だってふたりとも私のお父さんだし。彼も私の友達も、とっくに知ってるし」と言いきっておりました。今の夫も快諾してくれました。
当日、「私の家庭は珍しいかもしれませんが、私はたくさんの愛情をもらって育ちました。私は、お母さんもお父さんたちも大好きですし、感謝しています」という手紙を読み上げ、「ありがとう。お父さん」と、ふたりにひとつずつ花束を渡すと、ふたりの父たちは男泣きしてしまい、最後には肩を抱き合っていました。私も涙が止まりませんでした。娘なりにいろいろと感じることも考えることもあったでしょう。
でも素直に「私にはお父さんがふたりいて幸せでした。ふたりとも、そしてお母さんも私のことを大切にしてくれてありがとう」と言える娘に育ってくれたことに感謝しています。ありがとう。ずっと幸せにね。