第42回|色気のなかった男の子4人ですが、野性的に育ってくれてよかったのかな!?
耳原 桂子(仮名)さん【58歳・専業主婦・和歌山県】
神様から授かった私のベビー! なんてロマンチックな気持ちは最初だけ?

和歌山県に住む、58歳の専業主婦です。
4人のいかついあんちゃんの母親です。1人目で男の子が生まれてくれた時は、我が家のプリンス! 私のナイト! って感じでもう、ただただ嬉しかったのを覚えてます。
1人目の子が歩きだす前に、既に2人目を妊娠してました。それから私はずっと妊婦(笑)。しかも4人立て続けに(笑)。いえね、仲が良かったもんで(笑)。
4人の男の子の、しかも年子の育児ってどれほど大変か、お話させてもらいますね。
まず、私の宝物とも言える嫁入り道具の三面鏡。この三面鏡は両親が、
「旦那さんの前では、綺麗にしとかなあかんで、この三面鏡使うて毎日化粧してな」
って、持たしてくれた代物。ですけど、長男が庭にあった漬物石を思いっきりブン投げて、こっぱみじんに壊してしまいました。外へ逃げた長男のお尻をぶつため路地裏を走り回り、悲しみに暮れている暇もなかったです。
やっと長男へのお仕置きがすみ、家へ帰ったら、主人がきれーいにかたづけてくれていて、壊れた現物を見ないで済んだのが救いでした。さすがに見たらへこむと思うのでね。主人の思いやりに感謝でしたよ。
そんな主人も被害にあいました。主人はジャズやクラシックが好きで、ちょっとしたレコードコレクターだったんです。200枚くらいはあったんじゃあないですかね。そのレコードを、二男と三男が、2階のベランダからフリスビー代わりにして、外に向かって次々飛ばして遊んだんですね。一瞬にして、高価なプレミア付きの主人のお宝のコレクションはパーとなってしまいました。あの時はもう、背中を丸めて落ち込んでいる主人が可哀想で……。
一緒に拾いに行ったんですが、案の定バキバキに割れていました。悲しみに暮れて家へと戻ると、何やら我が家が騒がしいんです。嫌な予感がして、子供たちを探したら、何と、長男と三男が、猫を洗濯機にかけようとしてたんです。これには私も主人も、
「動物の命をなんと思ってるんや!!」
って夫婦そろって本気で怒鳴りつけました。その間に、末っ子の四男が、私のとっておきの、旅行土産のシャネルとサンローランの口紅を、6本くらいあったかな、それを片っ端からボキボキ折って、画用紙に口紅を朱肉代わりにして、手形と足形を押して1人で遊んでたんですね。こんな感じで本当に、大げさではなく、毎日が戦争でしたね。
長男の作ったルールは「耳原家の息子は、風呂上がりは全裸で過ごすこと」
小学生になって、ちょっと貫禄のついてきた長男が取り決めたのが、「耳原家の息子は、風呂上がりは全裸で過ごすこと」というルールでした。ですから、年がら年中4人の息子たちは、お風呂上がりは全裸でしたね。小さいころはそれも可愛かったんですよ。でも、高校生にもなって、全裸はないでしょ、普通(笑)。さらにあぐらをかくからもう、さすがに目のやりばに困りましたね。こんなんで、デリカシーにかけるから彼女の一人もできへんのや! なんて、思わずにはいられませんでした。
そんながさつなところを「男らしくてワイルドなところがステキ!」と学校の女の子にコクられた、と言い、長男に春が訪れました。粗暴で粗野なところも、見方を変えれば女の子にとっては魅力に映るんですね!
大あんちゃんをまねてなのか、中あんちゃんも、小あんちゃんも、そして末っ子の坊までもが次々と結婚していき、「和匠」さんにその都度、黒留袖や燕尾服、貸衣装とフルで何度もお世話になりました。ですので、お宮参りの留袖レンタルの頃はもう顔パス状態でした(笑)。若かった新米母も今では立派なおばあちゃんですよ。おおきに! みんなには感謝の気持ちでいっぱいです!